グロリエタでいつもの標識を無事「確認」した後は、いよいよサンタフェ、ニューメキシコ州の州都。25番のフリーウェイもエルドラド近辺まで来るともう見慣れた景色だ。自然とテンションも上がる。
サンタフェは、この広いアメリカの中でも比類のない独特な場所だ。(現存する中では)国内で2番目に古いこの街は、ネイティブ・アメリカン、スペイン系、メキシコ系、そしてカウボーイ等の様々な文化が融合し「サンタフェ・スタイル」と呼ばれる新しい分野を造りだした。「洗練された伝統」とでも言ったらいいだろうか。
”Santa Fe”は「聖なる信仰」という意味で、正式名称は ”La Villa Real de la Santa Fé de San Francisco de Asís” という。日本語に直せば、「アッシジのフランチェスコの聖なる信仰に忠実な都」だ。(どうやら私がイタリアのアッシジが好きなこととは無関係ではなさそうだ、笑)

まずは街の中心のプラザに行ってみた。10月は暑い夏が終わり、でもまだ寒くない絶好の気持ち良い季節。プラザの木々も黄色に光る。時間は限りなくゆったり流れるから、この後の予定も忘れそうだ。

今週末はアルバカーキで開催される Balloon Fiesta 期間中でもあり、多くの観光客が街を訪れていた。そのためか、いつもより出店も多かった。

実は今日は何を書こうか迷ったけど(サンタフェの話をすればキリがないから)、私の大好きなコーヒー屋さんの話をしたい。今回は約1時間程度の滞在だったが、ここは外せない場所、最初に来てからもう20年ぐらい経つ。
お店の名前は「Holy Spirit Espresso」、プラザからちょっと東に数ブロックほど行ったアートギャラリーの一角にひっそりとある。

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オーナーは超気さくで天然度200%のビルさん。最初に会ったのは90年代前半、まだ彼のお店が「ワゴン車」だった頃だ。当時は今の場所から更に1ブロック東に行った「Eldorado Hotel & Spa」の正面入り口付近にあった。まだ「ラテ(Latte)」という飲み物がアメリカで今ほど当たり前でなかった頃だけど、ミラノのカプチーノに決して負けていない、その美味しさに仰天したことを憶えている。お客さんの多くは観光客であったため、当然と言えばそれまでだが、ビルさんの入れるコーヒーのファンはヨーロッパ人が多かったというのも頷ける。世界中から御礼の絵葉書が届くそうでワゴン車の周りいっぱいに貼られていた。

そんなビルさんのワゴン車がお店に変わっていたのを発見したのが、2010年。仕事でサンタフェに移住した時だ。毎日何人のお客さんがいるんだろう、思い出してもらうのに時間がかかったが、「ああ思い出した。二年に一回ぐらい来る奴だろう」と言って貰ったときは嬉しかったなぁ。
お店の中のコーヒーマシンは当時のワゴン車そのもの。店内も大人4人入ったら満員。ビルさんもここ20年ぐらい毎年撮っている、という奥様と息子さんとの三人のポートレートも歴史が感じられて嬉しい。ご夫婦は早々変わらないものの、息子さんは最初赤ちゃんだったのがすっかり成人になっている。面白いね、当たり前なんだけど。

今日はビルさんは友人の手伝いとかでアルバカーキに行ってしまったらしく、初めて奥様にお会いした。正午になると少し汗ばむぐらいになったので、今日はアイス・カフェ・モカ」を注文した。これまたこのお店では「初」だ。氷を入れていない所が素敵だね。

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甘味を注入して元気をつけた後は、またルート66に戻ろう。夕方にはフライトもあるし、夕飯の約束だってある。ちょっと(後ろ髪なんかないけど)後ろ髪を引かれる想いのままサンタフェの街を出た。